一般的な消毒薬

各種消毒薬はそれぞれ固有の抗微生物スペクトルをもつことから、消毒薬を使用する上で留意して選択しなければ、期待する効果を得られない。

病原微生物の分類

  微生物の大きさは、寄生虫、真菌、細菌、リケッチャ、クラミジア、ウィルス、プリオンの順に小さくなる。原虫の一部や真菌、細菌の細胞は、赤血球よりも小さく、通常は数十μm程度である。頻繁に名前を目にする微生物の中でも、エキノコックスマラリア、ニューモチスカリニなどは原虫、カンジダ、クリプトコッカス、水虫などは真菌である。これらは、真核生物と呼ばれ、核膜で囲まれた核を持つ細胞からなり、細胞分裂時に染色体構造を生じる生物である。細菌、リケッチャ、クラミジア原核生物

と呼ばれる。原核生物とは核膜のない細胞からなる生物である。

細菌とウィルス

 細菌の細胞の外側には細胞壁があり、多糖類とペプチドから構成されている。細胞の中にはタンパク質合成を行うリボソームや、細胞呼吸を司るメソソームなどが存在する。原核生物である細菌は明確に区別できる核を持たないが、遺伝情報を司るDNAは糸状に集塊を作って、細胞内に存在する。大きさは、通常0.5~10μm程度である。

 対してウィルスはタンパク質の外殻の内部にDNA、もしくはRNAを持っただけの微生物であり、細菌のように栄養を摂取してエネルギーを生産するような生命活動を行わない。ウィルスは細胞をを宿主とするため、大きさは0.02~0.45μmと、細菌に比べ小さい。また自身で増殖する能力はなく、他の生物を宿主にして自己を複製することでのみ増殖する。

人体・環境・器具に使用する消毒薬

塩化ベンザルコニウム・塩化ベンゼトニウム

 第4級アンモニウム塩で、陽イオンを持つ原子団が菌体表面の陰イオン部分に吸着し、細胞内に浸透して細胞膜の構造を破壊する。

 陽イオン界面活性剤(逆性石鹸)であり、消毒効果と界面活性作用による洗浄効果を有する。石鹸などの陰イオン界面活性剤との混合により効力が低下する。皮革製品や合成ゴム、合成樹脂、光学器具、鏡器具、塗装カテーテルには使用しない。一般細菌や感受性緑膿菌や梅毒トレポネーマには有効であるが、ウィルスには効果がない。皮膚や創傷面、粘膜の消毒に使用できるほか、金属と非金属の消毒にも使用できる。

グルコン酸クロルヘキシジン

 陽イオンを持つことから菌体表面の陰イオン部分に吸着し、比較的低濃度で細菌の細胞膜に障害を与え、細胞質成分の不可逆的な漏出や酵素阻害を起こし静菌的に作用する。0.01%以上の比較的高濃度では細胞内の蛋白や核酸の沈着を起こし殺菌作用を現わす。

 グルコン酸クロルヘキシジンは低毒性であることから、創傷部位や手洗い時、手術野の消毒に繁用される。しかし、膣や膀胱などの粘膜面への使用ではショックの報告があり、脳、脊髄、耳への使用では、難聴や視覚障害を起こすことがあるため禁忌である。金属器具の長時間の浸漬時には防錆剤亜硝酸ナトリウムを添加する。塩化ベンザルコニウムと同様に、石鹸との混合により効力が低下する。一般細菌と感受性緑膿菌、梅毒トレポネーマに対しては有効であるが、ウィルスには効果が認められていない。皮膚や創傷面、金属、非金属に対して消毒を行うことができるが、粘膜に対しては、上述の理由から使用は禁忌である。

消毒用エタノール・イソプロパノール

 細菌の細胞膜中の脂質を溶解し、タンパク変性を惹起する。また、アルコールの脱水作用により、細胞内に浸透すると液体成分とともに蒸発させるため、細胞内部を乾燥させることで殺菌作用を現わす。

 抗菌スペクトルが広く短時間で効力を発揮することから広範囲に使用できる。さらに、他の消毒薬との混合使用で効果を高めるが、上述のような脱脂作用があり、頻回の皮膚への使用は適さない。粘膜や創傷面に対しても刺激があるため用いない。器具に対しては金属・非金属ともに変質することがあるため適さないが、一般細菌、MRSA緑膿菌、梅毒トレポネーマ、結核菌、真菌に対して有効である他、エンベロープを持つウィルスやエイズに対しても効果を発揮する。

 人体に使用する消毒薬

ポピドンヨード・ヨウ素

 ヨウ素の酸化作用により菌体タンパク中の-SH基、=NH基、-OH基などを酸化、破壊して細胞内のタンパクを変質させて殺菌作用を示す。殺菌力は中性からアルカリ性で強く現れる。

 ポピドンヨードはヨウ素にキャリアであるポリビニルピロリドンが結合した水溶性複合体で、徐々にヨウ素を放出するため毒性が低く、人体に広範囲で用いられるが、金属腐食性が強く、皮膚や衣類などを着色する。石鹸などの陰イオン界面活性剤との併用により効力が低下する。ヨウ素においてもポピドンヨードと同様の殺菌作用や作用機序であるが、皮膚刺激が強いため、使用は減少している。また人体への使用においては、長時間・広範囲の使用の際に血中ヨウ素濃度上昇の可能性があり、ヨウ素過敏症に注意する。細菌芽胞とB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス以外の微生物に対して有効であるが着色や強い腐食性のため、器具や環境の消毒には使用しない。

オキシドール

 血液や体組織に含まれるカタラーゼにより分解して発生期の酸素を放出し、強力な酸化作用により殺菌作用を示す。漂白作用、脱臭作用も有する。

 殺菌作用と、発生する大量の酸素の泡が洗浄効果を有し、汚れた外傷に繁用される。浸透性が弱く、持続力も短いため、低濃度、短時間での殺菌作用は弱い。低毒性、低刺激性であるが、発癌性の報告がある。抗菌スペクトルは狭く、一般細菌にのみ効力が認められている。

環境に使用する消毒薬

次亜塩素酸ナトリウム

 水と接触して次亜塩素酸(HOCl)または塩素ガスを生成し、主に次亜塩素酸の作用により殺菌作用を示す。細菌の細胞膜に浸透して酵素タンパク、核タンパクの-SH基を分解して殺菌作用を示す。また、ウィルスの構成タンパクなどを酸化して不活性化する。

 強力な消毒薬であり、漂白作用、脱臭作用も有する。濃度0.1%以上では強アルカリ性で刺激が強い。金属腐食作用が強く、多くの材料を変質させることがあるため、長時間の浸漬は適切ではない。酸性の洗浄剤との混合では大量の塩素ガスが発生するため併用は禁忌である。抗菌スペクトルは広く、エンベロープを持つウィルスやB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルスにも適応するが、細菌芽胞と結核菌に対しては有効ではない。

グルタラール(グルタルアルデヒド

 分子中のアルデヒド基(-CHO)が、菌体タンパク中の活性基(-NH2、=NH、-SH)などと反応してタンパク合成阻害などにより殺菌作用を示す。アルカリ性では反応が速くなる。

 現存する消毒薬の中では最も強い殺菌力を持ち、種々の材質の消毒に適する。さらに、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルスを殺菌できる上、エンベロープを持つウィルスや細菌芽胞に対しても有効である。有機物の影響を受けにくいが、器具や環境の消毒においては、付着している体液等の汚れは予備洗浄して用いる。蛋白凝固作用を有するので、人体への使用は不適である。眼や呼吸器系の粘膜刺激、皮膚炎や皮膚の白色化、硬化などが生じるため、付着や吸入に注意する。消毒に使用する際は、通気性の良い場所でプラスチックエプロンやゴム手袋を着用して取り扱う。

クレゾール石鹸液

 タンパクと緩く結合しタンパク変性を起こす。高濃度では細菌タンパクを凝固させ、低濃度では細胞壁に作用して溶菌させる。また、細胞膜に対する浸透性が強く、細胞膜の機能低下・破壊を起こし、細胞質のタンパクと結合して酵素作用を不活性化し細菌を死滅させる。

 腐食性で皮膚刺激が強く、損傷皮膚から吸収されやすいため、人体への使用は不適である。殺菌作用と石鹸の洗浄効果を併せ持ち、有機物の影響を受けにくく、有機物への浸透性が良いので、糞便・喀痰や環境の消毒に用いられる。皮膚や衣類等に対しては着色があるため使用しない。

広告を非表示にする

血液凝固系・RAA系・KK系

 

血液透析においては血液が回路やダイアライザなどの異物と接触し、血液凝固反応が惹起され、凝血のため体外循環は中断される場合がある。RAA系は 様々な病態において機能の低下が認められるが、透析患者に多いとされる糖尿病もその病態の一つである。また、血液凝固反応が起きると、同時にKK系の反応が進み、血圧のコントロールに影響を与える。このことから、これら3つの生体反応について知識を持つべきであると考える。

血液凝固系

 血液凝固に関わる物質を血液凝固因子と呼ぶが、これらは生理的状態では不活性な形で血中を流れている。血液凝固因子は第Ⅰ因子であるフィブリンから第XⅢ因子まであり、いずれも蛋白質で一部が切断されると活性を持った酵素となり、下位の凝固因子を活性化する。

 血管内皮が傷害され、血液が血管内皮下の組織に接触すると、血液凝固の為に第Ⅻ因子が活性化され、活性化第Ⅻ因子となり、内因系血液凝固が起こる。第Ⅻ因子は内皮細胞以外の陰性荷電物質と接触することで活性化することが知られている。

 外因系血液凝固は血管内皮細胞の損傷程度では起こらず、組織が破綻し、組織中の組織因子である第Ⅲ因子やトロンボプラスチンが露出したときに活性化される。これら2つの凝固反応は、終段では可溶性のフィブリノゲンがトロンビンの作用で不溶性のフィブリンとなって凝固する。

RAA

 RAA(レニン-アンギオテンシン-アルドステロン)系は生体内において血圧と体液量の調整機構として重要な役割を演じている。RAA系は、尿中NaCl濃度の低下、腎血流量の減少、ノルアドレナリンの放出などによって惹起される。

 腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞からレニンが分泌され血液中のアンギテンシノーゲンからアンギオテンシンⅠが産生される。アンギオテンシンⅠはアンギオテンシン変換酵素(ACE)によりアンギオテンシンⅡに変換される。アンギオテンシンⅡは全身の動脈を収縮させるほか、副腎皮質からのアルドステロンの生成・分泌促進作用を持つ。これらの作用を有することから、ACE阻害薬やアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬は高血圧治療薬として用いられる。この結果産生・放出されたアルドステロンは、Naを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加することで血圧を上昇させる。アンギオテンシノーゲンは血管、腎臓、脳、副腎、肝臓、卵巣など生体内で広く生産されている。また、レニンは血圧上昇後に分泌が低下し、RAA系の働きが低下する。

 腎血管性高血圧では、腎血管の狭窄などによる腎血流量の減少に伴い、糸球体濾過量が減少することで、緻密斑に到達するNaCl濃度が低下することでレニンの分泌が亢進するため、RAA系もその働きを増す。

KK

 KK(キニン-カリクレイン)系は血管内皮の損傷により、血液凝固系で活性化された活性化第Ⅻ因子はKK系においてプレカリクレインをカリクレインに変換することで反応が進む。カリクレインはタンパク分解酵素であり、キニノゲンに働いてブラジキニンというポリペプチドを産生する。ブラジキニンは発痛物質である他、血管拡張作用や血管透過性亢進作用を有する。さらに、集合管に作用して尿中へのNaの排泄を増加させ、血圧を低下させる作用を持つ。ブラジキニンは、KK系の最終段においてホスホリパーゼA2を活性化させ、アラキドン酸をPGE2に変換する。PGE2にも弱い発痛作用や血管透過性亢進作用、血管拡張作用を有するが、PGE2はブラジキニンの発痛作用を増強し、痛覚過敏にする。

 アンギオテンシン変換酵素はRAA系ではアンギオテンシンⅠに作用し血圧上昇を招くが、KK系ではブラジキニンと拮抗することで不活性化し、血圧の低下を抑制する。カリクレインはブラジキニンの産生に関与する他、第Ⅻ因子の活性化を促進することで、内因系血液凝固反応の引き金にもなり得る。

 

B型肝炎ウィルスとC型肝炎ウィルス

B型肝炎ウィルスとC型肝炎ウィルスは、肝炎の主な原因として知られています。これらによる肝炎はウィルス性肝炎と呼ばれ、肝硬変や肝癌につながることもあるため、適切な治療を行う必要があります。

肝炎ウィルスにはA~Eの型がありますが、ここでは血液や体液を介して感染し、医療現場で見かけることの多い「B型肝炎」と「C型肝炎」について記します。

B型肝炎

B型肝炎ウィルスはDNAウィルスに属しています。外被にはHBs抗原、芯の部分にはHBc抗原とHBe抗原を持っています。そのさらに内側にDNAが存在しています。また、外被タンパクの組み合わせから、「adw」「adr」「ayw」「ayr」の4つの「サブタイプ」に分けられます。

HBs抗体とはHBs抗原に対する抗体で、過去にB型肝炎ウィルスに感染していたか、ワクチンを接種した後に陽性となります。血液検査で「HBs抗原陽性」とはB型肝炎ウィルスに感染していることを意味します。HBs抗体は「中和抗体」と呼ばれ、抗原に結合して抗原の活性を消失させる働きがあります。しかし、サブタイプが異なるB型肝炎ウィルスの感染では、HBs抗原とHBs抗体が両方とも陽性である場合があります。

HBc抗原はB型肝炎ウィルスを構成するタンパク質で外被の内側に存在します。そのため、検出が難しく日常的な検査が難しいとされています。HBc抗体が低値であるときは、過去にB型肝炎ウィルスに感染していたことを示します。高抗体価の場合は現在B型肝炎ウィルスに感染していることを示し、ほとんどはHBs抗原も陽性です。

B型肝炎ウィルス感染初期に出現し、2~12か月に陰性化するマーカーとして「IgMHBc抗体」があります。高抗体価陽性ではB型急性肝炎、低抗体価陽性ではB型慢性肝炎の急性増悪やB型急性肝炎を意味します。たとえHBs抗原が陰性である場合でもIgMHBc抗体が陽性であればB型急性肝炎が疑われます。

HBe抗原はB型肝炎ウィルスの増殖時に産生される可溶性タンパクです。陽性であるときは血液中のB型肝炎ウィルスの量が多く感染性が強いことを意味します。HBe抗体はウィルスの増殖が減退し、HBe抗原産生がHBe抗体量を下回るとHBe抗体が検出されます。HBe抗体が陽性の場合、ウィルスは存在するが量は少なく、慢性肝炎では活動性・感染性は低いことが多いとされています。

感染経路

B型肝炎ウィルスは血液や体液を介して感染し、多くは母子感染によるものです。出産の際に産道で血液を介して、生まれる子供が感染してしまいます。しかし、国内ではワクチン接種が一般的となっており、垂直感染の数は減少しています。また、性的接触による感染も考えられます。

 

C型肝炎

C型肝炎ウィルスB型肝炎ウィルスとは異なり、RNAウィルスです。さらに、エンベロープを持っています。血液を介して感染し、急性肝炎を呈することが多く、60~70%は慢性化し、肝硬変や肝癌へ移行することがあります。

HCV抗体はC型肝炎ウィルスに感染すると血液中に現れ、発症2週間以降に陽性化しますが、ときには6か月後に陽性となることもあります。抗体価が低いときには過去の感染、高いときには現在の感染を示していますが、中間的な値では過去の感染と現在の感染の両方が考えられます。

そのため、HCV-RNA検査により両者を鑑別します。HCV-RNA検査はHCVのウィルス量を調べる検査で、PCR法と呼ばれる方法が用いられます。C型肝炎の進行に伴いHCV-RNAの値が高値になります。

 

原因

B型肝炎ウィルスと同様に血液を介して感染し、空気感染や経口感染はしません。国内では、注射針の使いまわしや医療機関での針刺し事故、古い時代の血液製剤使用、入れ墨、ピアスなどで感染するとされています。C型肝炎ウィルスでは、性的接触や垂直感染は少ないとされています。

抗血小板薬

血栓脳梗塞心筋梗塞の原因となるため予防が必要です。予防のためには血栓形成を防ぐ薬を服用します。血栓の形成は、血管が傷つくことで始まります。血管が損傷すると血小板の粘着性が高まると同時に血小板内で「トロンボキサンA2」の産生が亢進します。さらにトロンボキサンA2は血液中に放出され、「セロトニン」の作用により血小板が凝集を始めます。

また、凝固因子の活性化によりタンパク質の一つである「フィブリン」が産生されます。そして活性化された血小板がフィブリンや赤血球とともに血栓を形成します。

本来であれば、出血を止めるための機構ですが、個人の体質、血栓の性質や形成される場所によっては大事に至ることがあります。そのため、抗血小板薬や抗凝固薬の服用により予防する必要があります。

 

抗血小板薬

アスピリン

トロンボプラスチンA2は血小板内でプロスタグランジンから作られますが、少量のアスピリンを投与すると、シクロオキシナーゼの抑制を介してプロスタグランジンの産生が抑制されます。その結果、トロンボキサンA2が減少し血栓形成が抑制されます。

しかし、アスピリンは大量に投与するとプロスタグランジンの一つであるプロスタサイクリンの産生が抑制されます。プロスタサイクリンは血小板凝集を抑制する働きがあります。そのため、アスピリンの大量投与では血小板凝集が生じ、血栓ができやすくなってしまいます。(アスピリンジレンマ)

 

製剤例・・・アスピリン バイアスピリン など

 

オザグレルナトリウム(トロンボキサン合成酵素阻害薬)

オザグレルナトリウムはトロンボキサンA2を作る際に必要なトロンボキサン合成酵素の働きを妨げ、プロスタグランジンからトロンボキサンA2の産生を抑えることで抗血小板薬として効果を発揮します。

トロンボキサンA2に変換されなかったプロスタグランジンはプロスタサイクリンの材料となり血小板凝集抑制作用を示します。

オザグレルナトリウムはトロンボキサンA2の産生抑制に加え、プロスタサイクリンの作用により血栓形成を抑制します。

 

製剤例・・・オザグレン オザグレルNa キサンボン カタクロット ベガ ドメナン など

 

チクロピジン塩酸塩・クロピドグレル硫酸塩・プラスグレル塩酸塩(ADP受容体拮抗薬)

血小板が活性化されるとATPやADP、Caイオン、セロトニンが放出され、これらは血小板凝集を促進します。ADP受容体拮抗薬は、血小板膜上の「アデノシン二リン酸(ADP)」受容体を阻害することで血小板の活性化・凝集を抑制します。

また、cAMPの濃度上昇によりトロンボキサンA2の産生を抑えるとも考えられています。

 

製剤例(チクロピジン塩酸塩)・・・パナルジン

製剤例(クロピドグレル硫酸塩)・・・プラビックス

製剤例(プラスグレル塩酸塩)・・・エフィエント 

 

サルポグレラート塩酸塩

血小板は活性化すると、血液中にセロトニンを放出して他の血小板を活性化させます。サルポグレラート塩酸塩はセロトニン受容体を遮断して、血小板凝集を抑えます。

 

製剤例・・・アンプラーグ サルポグレラート塩酸塩 など

広告を非表示にする

糖尿病治療薬の種類

スルホニルウレア(SU)系

スルホニルウレア系薬は、膵臓のランゲルハンス島β細胞に存在するSU受容体に作用し、カルシウムイオンを増加させインスリンの分泌を促進する。

さらに、筋肉のブドウ糖を取り込む力を向上する作用や肝臓からのブドウ糖の放出を抑える作用をもつ。

 

製剤例・・・アマリール オイグルコン ダオニール グリミクロン など

 

ピグアナイド(BG)系

私たちの体内では、肝臓でグリコーゲンが分解されてブドウ糖になる糖新生がという現象が起きている。ピグアナイド系薬は糖新生を抑え、糖が腸から吸収されにくくしインスリンの反応性を向上させる作用を持つ。

 

製剤例・・・メトグルコ メデット メルビン グリコラン ジベトス など

 

インスリン抵抗性改善薬

インスリンが十分に分泌されているにも関わらず血糖値が異常高値を示す場合にはインスリン抵抗性が亢進していることが疑われる。この原因としてTNF-αというサイトカインの増加が挙げられる。TNF-αはPPAR2と呼ばれる、脂肪細胞の分化を促進する物質の働きを弱めるとされている。インスリン抵抗性改善薬はTNF-αの働きを抑え、PPAR2の活性を高めることで、インスリンの反応性を改善すると考えられている。

 

製剤例・・・アクトス アメル ピオグリタゾン錠「~」 など

 

αグルコシターゼ阻害薬

食物中の糖は唾液によって二糖類に分解され、腸に存在しているαグルコシターゼという酵素によりブドウ糖に分解・吸収される。αグルコシターゼ阻害薬は、二糖類に似た構造をとっているため、αグルコシターゼと結びつき、本物の二糖類と反応しにくくする働きを持つ。その結果、ブドウ糖に分解されるまでに時間がかかり、糖の吸収が穏やかになるため、急峻な血糖値の上昇を抑えることができる。

 

製剤例・・・ベイスン セイブル グルコバイ など

 

アルドース還元酵素阻害薬

糖尿病が進行するとグルコースの処理がうまくいかず、ソルビトールとして蓄積される。ソルビトール神経細胞に蓄積すると、細胞の機能低下や血流低下などにより神経組織に障害を与える。

アルドース還元酵素阻害薬は、グルコースソルビトールに変換される過程で働くアルドース還元酵素の働きを阻害し、ソルビトールの生成を抑える。

 

製剤例・・・キネダック エパルレスタット など

 

DPP-4阻害薬

食事を摂取すると消化管からインクレチンというホルモンが分泌され、インスリンの分泌を促進する。インクレチンはグルカゴンの放出を抑制するが、血糖値が80mg/dlを下回るとインスリン分泌促進作用とグルカゴン放出抑制作用を停止する。そのため、インクレチンの分泌により低血糖を起こすことは少ないと言える。

インクレチンは食事の摂取後に分泌されても、DPP-4(ジペプチジルペプチターゼ)により分解されてしまい、インスリンの分泌を促進する作用は期待外れなものとなる。DPP-4阻害薬はインクレチンの分解を抑え、作用を持続させることで血糖値の上昇を抑える。

 

製剤例・・・エクア ネシーナ トラゼンタ オングリザ テネリア ジャヌビア スイニー など

 

GLP-1アナログ製剤

インクレチンの中でもGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)を注射で補い、GLP-1受容体を刺激してインスリンの分泌を促進する。本来、GLP-1はすぐに分解されてしまうがGLP-1アナログ製剤はGLP-1が長時間持続するように構造を改良している。

 

製剤例・・・トルリシティ ビクトーザ ビデュリオン バイエッタ リキスミア など

 

SGLT2阻害薬

糖は腎臓(近位尿細管)から再吸収されるが、過剰となると再吸収されず尿へ排出され「尿糖」となる。糖が再吸収される際にはSGLT(ナトリウム・グルコース共輸送担体)という物質が関与する。SGLTには1と2が存在しているが、糖の再吸収に積極的に関わるのはSGLT2である。SGLT2阻害薬はSGLTを阻害し、糖の再吸収を抑え尿中に糖を排出することで血糖値を下げる作用を持つ薬である。

 

製剤例・・・ジャディアンス カナグル フォシーガ デベルザ アプルウェイ ルセフィ スーグラ など

糖尿病

糖尿病とは

糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンが不足することで起こる、糖やタンパク質、脂質の代謝異常です。糖尿病には1型と2型の2種類があり、他の疾患によって発症することもあります。発症は様々な遺伝子異常に起因します。症状としては、糖によって生じる浸透圧による多尿や、口渇・多飲、易疲労感、空腹感・多食などが挙げられます。また、血液中のブドウ糖は、高濃度になるとタンパク質と結合して複数の合併症を引き起こすことが知られています。

血糖値はどのように調節されるのか

血糖値とは血液中のブドウ糖濃度を表しています。食物から摂取した糖質(デンプン)は唾液や膵液によって分解された後、小腸でグルコースに分解されます。さらにグルコースは種々の過程を経てグリコーゲンとなり、肝臓や筋肉に蓄えられます。

 血糖値は膵臓から分泌されるインスリンとグルカゴンによって調節されています。インスリンは細胞膜の受容体と結合して、体内のブドウ糖を使用したり、グリコーゲンを新生することで血糖値を下げています。グルカゴンはグリコーゲンの分解を促進して血糖値を上げます。

1型糖尿病

インスリンを分泌する膵臓のB細胞が破壊され、インスリン量が不足することで起きます。そのため、治療にはインスリン注射が必要です。多くは子供のうちに発症しますが、ウイルス感染などが原因となり、B細胞に対する自己抗体が産生されることで引き起こされることがあります。

 糖の代わりに脂肪がエネルギーとして使用され、体重の顕著な減少が起こります。さらに、ケトン体を生じることから、ケトアシドーシスを起こしやすくなります。

2型糖尿病

2型糖尿病はインスリンの標的臓器である肝臓や筋肉がインスリンに反応しなくなる「インスリン抵抗性」により、ブドウ糖が細胞内に取り入れられなくなることで起こります。インスリンの量が絶対的に不足する1型糖尿病に対し、2型糖尿病ではインスリンの受容体が減少したり、受容体の後段でトラブルが生じるといった現象が体内で起きています。遺伝的素因のほか、肥満や食事内容、運動不足などの生活習慣がインスリン抵抗性を助長している場合も多く、代表的な生活習慣病とも言えます。

 治療では、食事療法や運動療法が行われ、高糖尿病薬を服用します。進行するとインスリン注射を使用することになります。

糖尿病の合併症

 糖尿病では血液中のブドウ糖濃度が上昇することで様々な合併症を招きます。特に影響を受けるのは身体中の微小血管で、各臓器に分布する毛細血管や細小動脈の基底膜が肥厚し、細小動脈硬化症を起こします。腎臓では糸球体基底膜、眼球では網膜において微小血管傷害を呈し、その結果として腎障害や網膜症に至ります。

 高血糖の状態が長期間に及ぶと神経細胞における代謝異常や微小血管傷害のため、末梢神経障害は感覚障害や自律神経失調をきたします。感覚障害では痺れ、こむら返り、疼痛などが代表的な症状です。自律神経障害では、臓器の活動や恒常性を司る神経がおかされるため、消化管機能の低下や血管運動神経の障害によるめまい・立ち眩み、排尿障害、勃起障害がみられます。

 これらの腎症、網膜症、末梢神経障害は糖尿病の「トリオパチー」と呼ばれ、糖尿病患者さんに頻発する合併症です。

 他にも糖尿病では肥満・高血圧・高脂血症などに伴い、冠状動脈や脳動脈、大動脈、四肢の動脈に粥状硬化を引き起こすため、心筋梗塞脳梗塞、末梢循環障害を合併しやすくなります。

 さらにインスリン欠乏のため好中球の解糖系が抑制されていることに起因する貪食能低下に加え、末梢血管障害のため血流が減少し、各組織が低酸素状態となるため易感染性も惹起されます。

 

 

 

 

広告を非表示にする

透析患者とリン・カルシウム

腎不全により透析を受けている患者では電解質の異常を呈するが、中でもリンとカルシウムの血清濃度異常は特に頻繁にみられる。

 

健常人のリン・カルシウム

健常人においては、Caは消化管からの吸収と尿中への排出によりバランスが保たれる。消化管でのCaの吸収は食物からのCa摂取とともに活性型ビタミンD3により調節される。ビタミンDの活性化は腎臓で行われる。ビタミンD3は食物からの摂取に加え、皮膚が紫外線を浴びることによっても作られる。活性型ビタミンD3は小腸におけるCaの吸収を促進させ、骨量の減少を抑える作用がある。

 

尿中への排出は糸球体濾過量と副甲状腺ホルモン(パラソルモン)の影響を受ける。パラソルモンは血液中のCa濃度が低下すると分泌が促進され、骨中のCaを取り出し、消化管からの吸収を促すことで血液中のCaを増加させる。また、尿中への排出を抑える。

対して甲状腺ホルモンであるカルシトニンは、パラソルモンと拮抗する働きを持つ。カルシトニンは消化管でのCa吸収と骨からの遊出を抑制し、血中Ca濃度を低下させる。そのため、腎臓からの排泄、骨形成を促進する。

 

体内のPのバランスは食物によるPの摂取と尿中への排泄により規定される。尿中への排泄は糸球体濾過量とパラソルモンの影響を受け、パラソルモンは近位尿細管でのPの再吸収を妨げることで尿中への排泄量を増加させる。

細胞外液中のCa濃度は血清P濃度の影響を強く受ける。血清P濃度が上昇すると「リン酸カルシウム」を形成し、血清Ca濃度は低下する。Pの値はビタミンD3の活性化にも影響を及ぼし、血清Pが増加すると活性型ビタミンD3の産生は低下する。

 

血清Caが低下すると・・・

・活性型ビタミンD3

 小腸でのCa吸収促進 → 血清Ca濃度上昇

・パラソルモン

 骨吸収 → 血清Ca濃度を上昇

 尿中へCa排泄減少 → 血清Ca濃度を上昇

 近位尿細管のP再吸収抑制(排泄増加) → 血清P低下

 

透析患者とリン・カルシウム

 透析患者のように糸球体濾過量が低下すると、腎臓でのPの排泄が減少し、血清P濃度は上昇する。そのため、腸管でのCa吸収を抑制し、骨へのCaの取り込みを亢進させ、血清Caは低下する。血清Ca濃度が低下すると、パラソルモンの分泌が増加する。

さらに、腎不全ではビタミンDの活性化が不十分であることから、腸管におけるCa吸収能は低下し血清Ca濃度も低下する。また、Caの低下に相応してパラソルモンの分泌は増加する。

 

このような状態は二次性副甲状腺機能亢進症を惹起する。腎不全患者の多くは、Caが低下しPが増加しており、副甲状腺が刺激されパラソルモンの分泌は促進され続けている。刺激され続けた副甲状腺は腫大し、血清Ca濃度に連動せずパラソルモンを分泌するようになる。過度のパラソルモンの分泌は骨よりのCa吸収による血清Ca濃度の上昇を起こし、骨病変の原因となる。さらには、カルシウムが軟部組織に沈着することで異所性石灰化を招く。