血圧と脈拍

血圧

 心臓から駆出される血液が血管を内側から押す圧力を血圧という.左心室の収縮のたび心室内の圧力は110~120mmHg程度となり,この圧力で大動脈へ流れ込む.血液は大動脈を通り,全身に分布する血管や臓器などに供給される.血圧は心室,大動脈,各動脈,小動脈などでは100mmHg±20mmHg程度の値を示す.

 

収縮期血圧拡張期血圧

収縮期血圧最高血圧) ⇒ 心臓が収縮する際の血圧 成人で110~120mmHg程度

拡張期血圧最低血圧) ⇒ 心臓が弛緩する際の血圧 成人で70~80mmHg

・末梢血管が収縮すると血流に対する抵抗が大きくなるため最高血圧が上昇する.

     → 血圧 = 心拍出量 × 末梢血管抵抗

・血圧は血管の弾性にも影響を受ける.血管の弾性を損なうような疾患を抱えている場合,最高血圧は上昇するが最低血圧は低下する.大動脈硬化や心拍出量が増加するような疾患では最高血圧のみが上昇する.また本態性高血圧や二次性高血圧(腎性,内分泌性,心血管性など)では最高血圧最低血圧の双方の値が上昇する.

 

脈拍

 心臓が血液を駆出する際に血管の内圧は変動し,血液や血管壁を通して振動として伝播する.これを脈拍という.脈拍は生体の中枢側ほど強く,末梢に近づくほど弱くなる.特に小動脈より先では急激に低下する.脈拍数は成人では1分間当たり60~100回程度であるが,乳幼児では100~140回程度と多い.

 

脈拍の変化

 不整脈・・・規則正しく触れる脈拍が不規則になること

 頻脈・・・脈拍数の多いもの

 徐脈・・・脈拍数の少ないもの

 硬脈・・・かたく触れる脈拍

 軟脈・・・やわらかく触れる脈拍

 速脈・・・拍動の速い脈拍

 遅脈・・・ゆっくりと拍動する脈拍

 大脈・・・大きくしっかりと触れることのできる脈拍

 小脈・・・弱く触れる脈拍

 

 

透析患者と高血圧

 透析患者の多くは高血圧を合併し,その原因として以下のような因子が挙げられる.

体重(体液量)の増加

 腎機能の損なわれた透析患者では,血液中の水分を腎臓によって取り除くことが困難であるため,体液量が増加し血圧上昇をもたらす.また食事などにより摂取した塩分は体内に吸収されやすく,体液の浸透圧上昇が生じ飲水を伴う.体液量が過剰になると,血液中の他にも組織間の体液や,細胞内液として体内に水分が貯留することとなり,さらには胸水や腹水として存在する.

RAA系

 RAA(レニン-アンギオテンシン-アルドステロン)系は生体内において血圧と体液量の調整機構として機能している.RAA系は尿中のNaCl濃度の低下,腎血流量の減少,ノルアドレナリンの放出などによって惹起される.透析患者では腎血管が傷害され腎血流量が減少し,糸球体濾過量が減少,緻密斑に到達するNaCl濃度が低下することでRAA系の働きが亢進する.RAA系の結果,産生し放出されたアルドステロンはNaを体内にとどめる働きがあることから,循環血液量が増加して心拍出量が増加することで血圧を増加させる.

 動脈壁の弾性の低下

  透析患者はリンとカルシウムの代謝・排出のバランスが崩れていることから血管壁の石灰化や動脈硬化を起こしやすい.これら結果,血管は弾性を損ない血圧は心拍出量と末梢血管の抵抗に影響されることから,血管壁の石灰化や動脈硬化により血圧上昇,特に最高血圧の上昇を招く.

 

rHuEPO

rHuEPOの投与では貧血の改善に伴い,高血圧を引き起こすことがある.貧血改善の目標値を高く設定した場合や改善が速い場合に高血圧の発生頻度が高いと言われている.