腎臓

 腎臓とは

 第11胸椎から第3腰椎の辺りに左右一対となって存在し,後腹膜に接着している.右の腎臓は左の腎臓よりも少し低く存在する.赤褐色でソラマメのような形をしており,内側面はわずかに窪み,腎門と呼ばれる腎動脈,腎静脈,尿管,神経,リンパ管などが出入りする部位がある.

腎臓の排泄機能

 血液中の水分,尿素,尿酸,クレアチニン,塩分や電解質などは腎臓で尿として生成され体外へ排泄される.この機能により血液中の不要な物質や有害物質の除去,血液や体液の浸透圧・pH調整,血液量の調節,血漿成分の調節が行われている.

 腎臓では糸球体という組織で血液を濾過することで原尿を作り出す.腎臓には心拍出量の1/4程度の血液が流れ込み常に原尿を生成し,その量は1日に約160Lである.このとき,糸球体の毛細血管壁の細孔の大きさと陰性荷電により,血液から再吸収する物質や尿として捨てる物質を選択する.水や尿素,尿酸,クレアチニンアミノ酸,糖などタンパクと結合していない物質はこのフィルタを通過する.アルブミンはこのフィルタを通過することができないが,何らかの原因により陰性荷電が崩れると通過できるようになる.原尿は尿細管へ流れ,必要に応じて水,電解質,糖,アミノ酸が再吸収される.糸球体を通過できない物質や過剰に存在する薬剤等は能動輸送により排泄される.

リアランス

 腎臓の排泄の能力を数字で表現したものであり,1分間に腎臓によって除去される物質が何mLの血漿中に含まれていたで表す.例えば,ブドウ糖は尿細管で完全に再吸収されるため尿中には排泄されず,そのクリアランスは0 mL/minである.他にも尿素では70 mL/min,クレアチニンでは140 mL/minである.

 

腎臓によるホルモンの分泌

 腎臓では上述のような尿の生成や排泄のほか,レニン,エリスロポエチン,プロスタサイクリンの分泌やビタミンDの活性化を行っている.

 レニンは糸球体にある細胞で産生され,アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変換する.アンジオテンシンⅠは肺や血管内皮細胞にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンⅡに変換される.アンジオテンシンⅡは血管を収縮させ血圧を上昇させる.腎不全においては,腎機能が完全に廃絶するまでレニンの分泌は活発になり,高血圧や糸球体高血圧をもたらす.これは糸球体での過剰な濾過やタンパク尿の原因となる.

 プロサタサイクリンは血管拡張物質として働き,糸球体の輸入細動脈,輸出細動脈,血管平滑筋,緻密斑,髄質へ流れる直血管の血管内皮で産生される.プロスタサイクリンはレニンの分泌の調節に関与し,アルドステロンを介するNaの再吸収を調節する.また,腎血流量や,腎糸球体濾過率を調節する.

 エリスロポエチンは骨髄幹細胞に作用して赤血球の分化に働く.エリスロポエチンは腎臓の尿細管周囲の間質細胞で作られ,低酸素刺激が誘導因子になる.慢性腎不全では尿細管周囲の間質細胞も障害されいているため貧血が起きやすく,これを腎性貧血と呼ぶ.

 ビタミンD3は骨形成や骨からカルシウムを溶出させるために必要であるが,日光中の290~330nmが皮膚に照射されることで作られ生体内に蓄えられる.ビタミンDは肝臓と腎臓で水酸化反応を受け,活性型ビタミンDとなってから作用を発揮する.腎不全では水酸化反応をもたらす水酸化酵素が不十分であるため,ビタミンDが活性化されず骨のカルシウム含有量が減少し骨病変の他,二次性副甲状腺機能亢進症となりやすい.