降圧薬の種類と作用機序

カルシウム拮抗薬

血管は平滑筋により伸縮している。平滑筋の収縮時には、平滑筋細胞にカルシウムが入り込み、血圧が上昇する。平滑筋細胞膜にはカルシウムイオンの入り口である「カルシウムイオンチャネル」が存在し、ここからカルシウムイオンが細胞に入ることで血管が収縮する。

カルシウム拮抗薬はイオンチャネルへのカルシウムイオンの侵入を阻止することで血管の収縮を抑え、血圧を下げる。

 

副作用として、顔の火照り、紅潮、頭痛、動悸、めまいなどを起こすことがある。

 

製剤例:アムロジン ノルバスク アダラート ペルジピン ランデル カルブロック など

 

ACE阻害薬

アンジオテンシンⅡが増えると血管が収縮し血圧が上昇する。ACE(アンジオテンシン転換酵素)はアンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡに転換するほか、ブラジキニンを分解する働きがある。ブラジキニンは血管内皮細胞の破壊に伴なって産生され、血管透過性を亢進させ、疼痛を引き起こすが、血圧降下作用を持つ物質でもある。

ACEの働きを阻害することで、アンジオテンシンⅡの産生とブラジキニンの分解が抑制されるため血圧が低下する。

 

アンジオテンシンⅡは、糸球体の輸入細動脈と輸出細動脈のうち、輸出細動脈をより収縮させる。ACE阻害薬は輸出細動脈を拡張させることで、腎臓を保護する作用があるため、糖尿病患者に頻繁に用いられる。

 

製剤例:エースコール コバシル タナトリル レニベース など

 

 

アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)

アンジオテンシンⅡは、アンジオテンシン受容体と結合することで血管を収縮させ、血圧を上昇させる。

ARBアンジオテンシン受容体を遮断することで血圧を下げる。

 

アンジオテンシン受容体は2つ存在している。アンジオテンシンⅠ受容体(AT1)はアンジオテンシンⅡに刺激されると血管を収縮させる。また、アルドステロンを分泌させてNaイオンの再吸収を促進させることで、血漿循環量を増加させ血圧を上昇させる。

対して、アンジオテンシンⅡ受容体(AT2)はアンジオテンシンⅡの刺激により、血管平滑筋を弛緩させる働きやNa利尿を促進させる働きを持つ。AT1のみを遮断するARBを特にAT1拮抗薬という。

 

製剤例:ミカルディス ブロプレス ディオバン(バルサルタン) ニューロタン

 

 

アルドステロン阻害薬

アルドステロンがアルドステロン受容体と結合すると、Naイオンの再吸収を促進し血圧が上昇する。

アルドステロン阻害薬は受容体への結合を抑えることでNaイオンの再吸収を阻害する。

 

腎臓に作用して水分とNaを排出するため、むくみが改善される。

 

製剤例:セララ(エプレレノン)

 

 

β遮断薬

交感神経の興奮は、ノルアドレナリンがβ受容体に結合して伝わる。β遮断薬は心臓のβ受容体を遮断することで、心拍数・収縮力を抑える。

 

β受容体を遮断すると、血管は一時的に収縮するが収縮力が弱くなっているため、末梢への血流が不十分となる。その結果、末梢血管は拡張して血液を流し込もうとして、降圧薬として効果は大きくなる。

 

製剤例:メインテート(ISA-) セレクトール(ISA+) アーチスト(カルベジロール) など

 

※「ISA」・・・Intrinsic Sympatthomimetic Activity(内因性交感神経刺激作用)

 交感神経を刺激する何らかの力が生じたときに限り、β遮断作用を発揮する。安静時には、β受容体をわずかに刺激することで徐脈を防ぐ。

 

α遮断薬

ノルアドレナリンはα受容体にも結合し、血管を収縮させる。α受容体にはα1とα2があり、両方を遮断すると血管の収縮は抑制できるが、ノルアドレナリンの増加を招く。そのため、血圧を下げる目的ではα1のみを遮断する薬剤が使用される。

 

α遮断薬は、グリコーゲンの分解を抑制し、血糖の上昇を抑える作用がある。また、血清コレステロールの減少やHDLの上昇など脂質代謝を改善する働きも持っている点で、他の降圧薬とは異なっている。

 

製剤例:カルデナリン デタントール ミニプレス エブランチル など

 

 

利尿薬

高血圧症に対しては、循環血液量を減らして血圧を下げる方法がとられることがある。サイアザイド系利尿薬は降圧剤としてよく用いられている。遠位尿細管でNaイオンの再吸収を抑えるため、水分が血管に引き込まれなくなり、循環血液量が減少する。

 

ループ系利尿薬はヘンレループの上行脚に作用し、NaイオンやKイオン、Clイオンの共輸送を阻害し、NaイオンとClイオンに加え、水分を尿中に排泄させる。

 

カリウム保持性利尿薬は遠位尿細管と集合管でのNa再吸収を抑え、Kの排出を抑制する。

 

近位尿細管での浸透圧上昇を利用して、水分の再吸収を抑制するものを浸透圧利尿薬と呼ぶ。

 

製剤例(サイアザイド系):フルイトラン ダイクロトライド べハイド など

製剤例(ループ系):フロセミド(ラシックス) ダイアート ルプラック など

製剤例(カリウム保持性):ソルダクトン アルダクトン ジウテレン など

製剤例(浸透圧利尿):D-マンニトール