抗血小板薬
血栓は脳梗塞や心筋梗塞の原因となるため予防が必要です。予防のためには血栓形成を防ぐ薬を服用します。血栓の形成は、血管が傷つくことで始まります。血管が損傷すると血小板の粘着性が高まると同時に血小板内で「トロンボキサンA2」の産生が亢進します。さらにトロンボキサンA2は血液中に放出され、「セロトニン」の作用により血小板が凝集を始めます。
また、凝固因子の活性化によりタンパク質の一つである「フィブリン」が産生されます。そして活性化された血小板がフィブリンや赤血球とともに血栓を形成します。
本来であれば、出血を止めるための機構ですが、個人の体質、血栓の性質や形成される場所によっては大事に至ることがあります。そのため、抗血小板薬や抗凝固薬の服用により予防する必要があります。
抗血小板薬
アスピリン
トロンボプラスチンA2は血小板内でプロスタグランジンから作られますが、少量のアスピリンを投与すると、シクロオキシナーゼの抑制を介してプロスタグランジンの産生が抑制されます。その結果、トロンボキサンA2が減少し血栓形成が抑制されます。
しかし、アスピリンは大量に投与するとプロスタグランジンの一つであるプロスタサイクリンの産生が抑制されます。プロスタサイクリンは血小板凝集を抑制する働きがあります。そのため、アスピリンの大量投与では血小板凝集が生じ、血栓ができやすくなってしまいます。(アスピリンジレンマ)
オザグレルナトリウム(トロンボキサン合成酵素阻害薬)
オザグレルナトリウムはトロンボキサンA2を作る際に必要なトロンボキサン合成酵素の働きを妨げ、プロスタグランジンからトロンボキサンA2の産生を抑えることで抗血小板薬として効果を発揮します。
トロンボキサンA2に変換されなかったプロスタグランジンはプロスタサイクリンの材料となり血小板凝集抑制作用を示します。
オザグレルナトリウムはトロンボキサンA2の産生抑制に加え、プロスタサイクリンの作用により血栓形成を抑制します。
製剤例・・・オザグレン オザグレルNa キサンボン カタクロット ベガ ドメナン など
チクロピジン塩酸塩・クロピドグレル硫酸塩・プラスグレル塩酸塩(ADP受容体拮抗薬)
血小板が活性化されるとATPやADP、Caイオン、セロトニンが放出され、これらは血小板凝集を促進します。ADP受容体拮抗薬は、血小板膜上の「アデノシン二リン酸(ADP)」受容体を阻害することで血小板の活性化・凝集を抑制します。
また、cAMPの濃度上昇によりトロンボキサンA2の産生を抑えるとも考えられています。
製剤例(チクロピジン塩酸塩)・・・パナルジン
製剤例(クロピドグレル硫酸塩)・・・プラビックス
製剤例(プラスグレル塩酸塩)・・・エフィエント
サルポグレラート塩酸塩
血小板は活性化すると、血液中にセロトニンを放出して他の血小板を活性化させます。サルポグレラート塩酸塩はセロトニン受容体を遮断して、血小板凝集を抑えます。
製剤例・・・アンプラーグ サルポグレラート塩酸塩 など