B型肝炎ウィルスとC型肝炎ウィルス

B型肝炎ウィルスとC型肝炎ウィルスは、肝炎の主な原因として知られています。これらによる肝炎はウィルス性肝炎と呼ばれ、肝硬変や肝癌につながることもあるため、適切な治療を行う必要があります。

肝炎ウィルスにはA~Eの型がありますが、ここでは血液や体液を介して感染し、医療現場で見かけることの多い「B型肝炎」と「C型肝炎」について記します。

B型肝炎

B型肝炎ウィルスはDNAウィルスに属しています。外被にはHBs抗原、芯の部分にはHBc抗原とHBe抗原を持っています。そのさらに内側にDNAが存在しています。また、外被タンパクの組み合わせから、「adw」「adr」「ayw」「ayr」の4つの「サブタイプ」に分けられます。

HBs抗体とはHBs抗原に対する抗体で、過去にB型肝炎ウィルスに感染していたか、ワクチンを接種した後に陽性となります。血液検査で「HBs抗原陽性」とはB型肝炎ウィルスに感染していることを意味します。HBs抗体は「中和抗体」と呼ばれ、抗原に結合して抗原の活性を消失させる働きがあります。しかし、サブタイプが異なるB型肝炎ウィルスの感染では、HBs抗原とHBs抗体が両方とも陽性である場合があります。

HBc抗原はB型肝炎ウィルスを構成するタンパク質で外被の内側に存在します。そのため、検出が難しく日常的な検査が難しいとされています。HBc抗体が低値であるときは、過去にB型肝炎ウィルスに感染していたことを示します。高抗体価の場合は現在B型肝炎ウィルスに感染していることを示し、ほとんどはHBs抗原も陽性です。

B型肝炎ウィルス感染初期に出現し、2~12か月に陰性化するマーカーとして「IgMHBc抗体」があります。高抗体価陽性ではB型急性肝炎、低抗体価陽性ではB型慢性肝炎の急性増悪やB型急性肝炎を意味します。たとえHBs抗原が陰性である場合でもIgMHBc抗体が陽性であればB型急性肝炎が疑われます。

HBe抗原はB型肝炎ウィルスの増殖時に産生される可溶性タンパクです。陽性であるときは血液中のB型肝炎ウィルスの量が多く感染性が強いことを意味します。HBe抗体はウィルスの増殖が減退し、HBe抗原産生がHBe抗体量を下回るとHBe抗体が検出されます。HBe抗体が陽性の場合、ウィルスは存在するが量は少なく、慢性肝炎では活動性・感染性は低いことが多いとされています。

感染経路

B型肝炎ウィルスは血液や体液を介して感染し、多くは母子感染によるものです。出産の際に産道で血液を介して、生まれる子供が感染してしまいます。しかし、国内ではワクチン接種が一般的となっており、垂直感染の数は減少しています。また、性的接触による感染も考えられます。

 

C型肝炎

C型肝炎ウィルスB型肝炎ウィルスとは異なり、RNAウィルスです。さらに、エンベロープを持っています。血液を介して感染し、急性肝炎を呈することが多く、60~70%は慢性化し、肝硬変や肝癌へ移行することがあります。

HCV抗体はC型肝炎ウィルスに感染すると血液中に現れ、発症2週間以降に陽性化しますが、ときには6か月後に陽性となることもあります。抗体価が低いときには過去の感染、高いときには現在の感染を示していますが、中間的な値では過去の感染と現在の感染の両方が考えられます。

そのため、HCV-RNA検査により両者を鑑別します。HCV-RNA検査はHCVのウィルス量を調べる検査で、PCR法と呼ばれる方法が用いられます。C型肝炎の進行に伴いHCV-RNAの値が高値になります。

 

原因

B型肝炎ウィルスと同様に血液を介して感染し、空気感染や経口感染はしません。国内では、注射針の使いまわしや医療機関での針刺し事故、古い時代の血液製剤使用、入れ墨、ピアスなどで感染するとされています。C型肝炎ウィルスでは、性的接触や垂直感染は少ないとされています。