赤血球関連の検査値

赤血球について

赤血球は、エリスロポエチンが骨髄中の赤芽球系前駆細胞に作用し、骨髄系幹細胞から分化・成熟した細胞である。

エリスロポエチンは腎臓で産生されヘモグロビンの産生を促す。また、細胞が成熟・増殖するためにDNAの合成が不可欠であるが、その過程ではビタミンB12葉酸が必要となる。

 

赤血球数(RBC)

・男性:4.27~5.70(×10^6/μL) 女性:3.76~5.00(×10^6/μL)

赤血球数は自動血球計数器で測定される。Hbやヘマトクリット(Ht)などの値も同時に測定される。

赤血球に影響を及ぼす因子

・造血幹細胞の異常 - 再生不良性貧血 真性多血症

・DNA合成にかかわる異常(葉酸ビタミンB12の欠乏) - 巨赤芽球性貧血 

エリスロポエチンの異常 - 腎性貧血

・失血や溶血 - 溶血性貧血 出血

ヘモグロビン(Hb)

・男性:13.5~17.6(g/dL) 女性:11.3~15.2(g/dL)

・ヘモグロビンは酸素と結合し輸送する機能を持つことから、値の低下は貧血症状に直結する。

・ヘモグロビンはタンパクである「グロビン」と鉄(ヘム)が結合した複合タンパクである。

ヘモグロビンの低下

赤血球産生障害

・鉄欠乏性貧血

・ヘム合成異常 - 鉄芽球性貧血

・グロビン合成異常 - セラサミア(地中海貧血)

ヘマトクリット(Ht)

・男性:39.8~51.8(%) 女性:33.4~44.9(%)

ヘマトクリット赤血球が全血に対して占める容積率を表している。

ヘマトクリットが上昇すると、血液は粘性を増す。

・腎不全などにより血液が希釈されるとヘマトクリットは低下する。

・多血症においてはヘマトクリットが上昇し、過粘度症候群となりえる。

過粘度症候群

赤血球が異常に増加することで血管内において血液凝集や血栓症が起こる。

・血液中のマクログロブリンの増加や、赤血球が毛細血管を通過する際の変形能の低下によっても起こる。

 ・マクログロブリン血漿タンパクに含まれる高分子量グロブリン

  ・グロブリン血漿タンパクの一種

心不全血栓・頻呼吸や無呼吸などの呼吸障害・チアノーゼ・震戦・痙攣など種々の症状があらわれる。

・腎臓の血管に血栓が生じると腎臓の組織がダメージを受け、尿細管の傷害やタンパク尿があらわれる。

 

・血清鉄 男性:80~200(μg/dL) 女性:60~180(μg/dL)

・成人では体内に約3~4gの鉄が存在する。

・体内に存在する鉄のうち、60~70%は赤血球内にヘム鉄として存在する。

・体内に存在する鉄のうち、20~30%はフェリチンやヘモジデリンなどの貯蔵鉄として臓器や組織に存在している。

・血清鉄は早朝に高く夜間に向かって減少するといった日内変動を示す。

・血清鉄は感染症・悪性腫瘍・膠原病・慢性失血・鉄欠乏性貧血では低値となる。

トランスフェリンとTIBC・UIBC

・血清鉄は血漿中のトランスフェリンと結合しており、体内に存在する鉄としては0.1%程度に過ぎない。

 ・トランスフェリンは糖タンパクで、βグロブリン分画の多くを占める

 ・トランスフェリンは炎症のマーカーとして減少する。

 ・生体内において、単体の鉄は有害で不安定であるため、血中ではトランスフェリンと結合し安定している。

  ・血清中の鉄の99%以上がトランスフェリンと結合している。

  ・正常な血清中ではトランスフェリンの1/3が鉄と結合している。

   ・残りの2/3は遊離型で鉄と結合できる。

・TIBC(Total Iron Binding Capacity:総鉄結合能)はトランスフェリンが結合しうる鉄の総量である。

・UIBC(Unsaturated Iron Binding Capacity:不飽和鉄結合能)は血清中で鉄と結合していないトランスフェリンの量をいう。

血漿中の鉄が減少すると代償によりUIBCが増加し、鉄吸収の効率を高めようとする。

フェリチン

・男性:30~300ng/mL 女性:10~120ng/mL

・フェリチンは水溶性タンパク質で、肝臓や脾臓胎盤で合成される。

・貯蔵鉄の役割を担う。

 ・鉄が欠乏すると、初めに貯蔵鉄が減少し、次に血清鉄が低下する。

 ・血清鉄の低下が進むと赤芽球への鉄の取り込みが減少し、ヘモグロビンの合成ができなくなる。

・鉄欠乏では低値、鉄過剰では高値となる。

・成長期では低値、加齢に伴い増加する傾向にある。

・悪性腫瘍ではフェリチンは高値となるが、血清鉄は減少する。